基礎知識

空冷ビートルの部品は1台作れるほど売ってるってホント?空冷VWパーツ事情を解説!

「空冷ビートルの部品は何でもある」

クラシックカーの中でもだんとつで部品があるとされる空冷ビートルですが、実際のところどうなのでしょうか?

この記事では、皆さんが気になる「空冷ビートルの部品事情」を解説しています。

空冷ビートルの部品事情

一般的に自動車メーカーの純正部品の供給は、その車の生産終了から平均で約10年と言われており、車種や部品によってはもっと早くに供給終了となってしまうケースもあります。

空冷ビートルも、生産終了からすでに50年近く経ち、当然メーカーからの純正部品の供給は一切ありません。現在流通している部品の多くは、アフターマーケットの「社外部品」になります。

国産旧車やマイナークラシックカーのような車両にありがちな「些細な部品の入手にも困る」「中古部品に頼らざるを得ない」といったことは、空冷ビートルに関して言えば、一切ありません。多くの部品がNewパーツで手に入り、特にドイツ生産のキャブレターモデルや、ファンの多い低年式モデルは、豊富な部品が流通していて、その総数は大袈裟ではなく、ビートルが1台組み立てられるほど!

空冷ビートルの部品が豊富にある理由

未だ多くの部品が流通している大きな理由の一つが、世界中に居る空冷ビートルファンの存在です。

「世界で最も愛された車」と称されることの多いビートルは、長年に渡り「総生産台数、世界一」。ビートルの最終モデルになるメキシコビートル(メキビー)が生産終了してからは、その座をカローラやフォードFシリーズトラックに譲ったものの、「単一同一車種」(モデルチェンジの無い1つの車種)としては、現在もその記録は破られていません。(カローラやFトラックはあくまでシリーズ全体での台数)

ビートルは販売台数の多さもさることながら、当時は世界各国に生産拠点があり、輸出国の多さもあって、世界で最も認知され乗られた車として、世界中にファンの多い車です。当然ファンの多さは、その市場(アフターマーケット)の大きさを表すものであり、ビートルの維持や修復に欠かすことの出来ない「部品」を手掛ける社外品メーカーやショップも世界中に多く存在します。

社外品とは何?

社外品とは、メーカー純正部品ではない、第三者が製造した部品の総称。ビートル用パーツとして出回っている部品の多くが、この「社外品」になります。

一般的な「社外品」には、高価な純正部品の代用品としての「安価な社外品」がありますが、ビートルで言う社外品とは、メーカーからの供給が終了した部品の、リプロダクト品(複製・模造品)になります。

社外品に付きまとう問題の1つに「質の悪さ」がありますが、近年ではハイクオリティーな製品をプロデュースするメーカーも増え、社外品の悪いイメージも払拭されつつあります。

社外品の一部になりますが、中には当時純正部品をメーカーに供給していた企業が、現在もOEMとして補修部品を製造・供給している物もあります。(例、HELLA、BOSCH、VDO、SWF、ATE、Continental等)

「NOS」とは?

NOSとは「NewOldStock」の略で、新品純正部品の長期保管品のこと(デッドストック)。

メーカー純正部品なので、質に問題があることが多い社外品とは違い、品質の高さは折り紙付き。ただし、当然全ての部品がある訳ではなく、あったとしても希少性の高さから「高価」になります。中にはコレクターズアイテムになってしまっているものもあるので、普段の修理やメンテナンスに使うには、どうしても必要な場合を除き、不向きかもしれません。

ビートルパーツはどれくらい売っているの?

現在流通している部品の総数は、はっきり言って大過ぎて不明…。ですが1台に必要な部品として考えると、車体のおおよそ8割は社外品で揃います。

8割だとまだ2割は無いことになりますが、通常のレストア・修復作業で必要になるであろう部品の多くは十分にあるので、ビートルで「部品の入手に困る」と言ったことはあまり無いと言えるでしょう。

ボディーに関しては、ドアやフェンダーなどの大物から、付属の細かな部品まで、概ね全年式用が売っています。

補修用ボディーパネルに関しては、ボディーの約8割があり、一般的なレストアや事故修理で必要になるウエストラインから下は、Newパネルでほぼ揃います。ただ丸々ボディー作ろうとすると、無いのがルーフやインナーパネル。しかし近年、続々と新たなパネルがリリースされていることもあり、1台作れる時代が来る日も近いかもしれません。

エンジンは、ブロックから補器類を含め、オールNewパーツで組み立て可能!

以前は(10年程前)VW製のNewエンジンも手に入りましたが、現在コンプリートエンジンとして入手出来るのは、アフターマーケット品のみになります。ただ、それらを形作るすべての部品は、あくまで社外品である為、部品の品質はまちまち。「社外新品より純正中古の方がマシ」といったこともよくあります。

ミッション・サスペンション・ブレーキなど駆動系(足回り)は、ほとんどすべての部品が社外品で入手可能です。オリジナルに準じたレストア作業では、年式によって手に入らないものもありますが、そうでないのであれば、100%売っている物だけで、走行可能な状態まで組み立てることが出来ます。

部品関連用語集

  • 【社外品】メーカー純正品ではない第三者が製造販売した製品。(模造コピー・オリジナルアクセサリー含む)
  • 【アフターマーケット】メーカー以外の第三者が製造販売した製品で成り立つ、補修部品やアクセサリー類の市場。
  • 【リプロダクト品】単なる偽物やコピー品とは違い、著作権・意匠権が切れて製造権利が一般化された物を、デザインや機能をそのままに第三者が再生産した製品。
  • 【OEM】メーカーへの部品供給企業が、同製品を自社ブランドで販売すること。(OEMメーカー・OEM製品)
  • 【NOS】「New Old Stock」の略で、新品純正部品の長期保管品のこと(デッドストック)。

メーカーからの部品供給が一切無いビートルでは、社外部品の存在こそが、長く乗り続ける為の要にもなっています。