「空冷ワーゲンのオイルは何を使えばいいの?」
空冷ワーゲンに乗り始めたばかりの方なら誰でも最初に持つ疑問だと思います。「ネットで調べたけど説明が難しくて今ひとつ分からない」「知りたいのはオイルの銘柄!」といった方も多いはず?そんな疑問を空冷ワーゲンの匠に聞いてみました。
匠
空冷ワーゲン一筋数十年。年間100台以上の空冷ワーゲンを手掛け、車体からエンジン製作までこなす空冷ワーゲンの匠。

空冷ワーゲンオイル事情
VWstyle(以下ブイスタ):空冷ワーゲンのオイルは何を使えばいいのですか?国産車ならメーカー指定や推奨オイルが指定されていますが空冷ワーゲンは?
匠:空冷ワーゲンの推奨オイルはシングルグレードSAE30とSAE40。数字は粘度で30より硬いのが40。季節によって使い分る必要があって、夏は40番それ以外は30番といった感じ。

現在「空冷ワーゲン用オイル」「自動車用空冷エンジンオイル」とされる物は無く、事実上水冷エンジン用として販売されている汎用市販オイルの中で空冷ワーゲンに使えるオイルを選ぶ形。
空冷ワーゲンにマルチグレード
ブイスタ:今現在マルチグレードが主流ですが、空冷ワーゲンに使えるマルチグレードはありますか?
匠:空冷ワーゲンに使えるマルチグレードは「20w-50」付近。そもそもシングルグレードとマルチグレードの違いは性質の違い。シングルグレードは全温度域で粘度の変化が少ないオイル。マルチグレードは温度域に合わせて適正な粘度を保つ性質を持ったオイル。実際は表記の違いだけの部分もあり、シングルグレード30.40番と似た性質を持ったマルチグレードであれば使用に問題はありません。
匠:マルチグレードなら、理論上1年中同じオイルを使用可能なことになりますが、実際はカバーしている温度域が広いことや、水冷エンジンターゲットのオイルを温度変化の大きい空冷エンジンで使用することから、冷間時・温間時の粘度はシングルグレードより低め(柔らかい)。

20w-50以外には「15w-40」「15w-50」「20w-40」なども使用可。使用粘度や使用エンジンによっては夏期など交換が必要な場合もあります。
空冷ワーゲンに使えないオイル
ブイスタ:空冷ワーゲンに使ってはいけないオイル。もしくは適さないオイルなどはありますか?
匠:絶対にダメなのは粘度の低いオイル。0w-◯◯、5w-◯◯、10w-◯◯などは粘度が低すぎるから絶対に使用不可。ただし緊急時に足す程度なら問題ありません。
匠:空冷ワーゲンでの粘度の低いオイルの使用は、オーバーヒートや油膜切れの原因にもなり最悪エンジン破損にも。使ってすぐに出る症状はオイル漏れやオイル上がりによる白煙。

高性能車用オイル・環境配慮型オイル・2輪用オイル・ディーゼルエンジン用オイルも使用不可。空冷ワーゲンに使える粘度であっても用途や目的によって入っている成分や特性が大きく違うので、空冷ワーゲンに使えばトラブルの原因にも。
空冷ワーゲンには鉱物油・化学合成油?
ブイスタ:一般的に「クラシックカーには鉱物油」「古い車に化学合成油は良くない」と聞きますが本当?
匠:空冷ワーゲンは鉱物油推奨ではありますが、実際は化学合成油を使っても支障はありません。
匠:「化学合成油が古い車に向かない」とされている理由は「化学合成油が古いタイプのオイルシール・パッキンなどを侵す」といったもの。空冷ワーゲンに限っての話ですが、長期に渡った化学合成油を使用した検証でも、シール類の劣化が著しく早いことやオイル漏れを助長するような事例は確認していません。

エンジンオイルは車の年代とその時代のオイルが1番マッチしていることは確か。(鉱物油は古く化学合成油は新しい)ただし化学合成油の高度に管理され精製された高性能な品質は空冷ワーゲンでも使用したいオイル。
空冷ワーゲンに最適なオイル3選!

空冷ワーゲンでもっともメジャーなオイル「バルボリン」。空冷ワーゲンでも古くから使用されてきた安心して使える製品。空冷ワーゲンオイルに必要不可欠なZDDP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)をより多く配合した「HIGH ZINC」もライナップ。

ベースオイルでは定評のあるアメリカ ペンシルベニア産の原油を使用した100%アメリカ製鉱物油オイルのケンドール。バルボリンと並び古くから空冷ワーゲンや空冷ポルシェでは使用され来た歴史があり、信頼の出来るオイル。

潤滑性の高いエステルをベースオイルに使用したエステル系化学合成オイル。一般的オイルと比較して高温時の粘度低下率が低いのが特徴。温度変化の大きい空冷ワーゲンでも安定して使用出来ます。
空冷ワーゲンオイルまとめ
今回、空冷ワーゲンに最適なオイルとして3点紹介しましたが、実際は地域(平均気温)季節(気温)エンジン状態(過走行等)によって適したオイルも違います。
ご自身でオイル交換を行う場合には、自分の車(エンジン)に合ったオイルを探すこと。ライフスタイルに合ったオイル交換サイクルを見つけることが重要です。
※オイル交換をショップ(空冷ワーゲン専門店)で行ってもらう場合は必ずショップに指示に従うこと。ショップ側は色々な状況を踏まえた上で使用するエンジンオイルを厳選、選定しています。
何より大切なのは空冷ワーゲンのオイル交換はマメに。
テクニカルデータ
- エンジンオイル量 2.5L(1.5クオートオイルサンプ付き4L)
- 交換サイクル 3000km〜5000km毎又は3ヶ月〜半年毎