ポップでカラフルなかわいい車として人気の「ワーゲンバス仕様の車」。「ワーゲンバス」の名前と姿はなんとなく知っていても、あのワーゲンバス仕様の軽自動車がいったい何なのかは、よく分かっていない人も多いのでは?
そんなワーゲンバス仕様を、ワーゲンバスの専門家、空冷ワーゲンのポータルサイト「VWstyle」が徹底解説します!
ワーゲンバス仕様とは?
ワーゲンバス仕様の歴史は古く、逆上ること70年前!国産ワンボックスカーをフォルクスワーゲン・タイプ2(通称ワーゲンバス)風にカスタムした車の総称。「レプリカ」と呼べる域ではなく、あくまでタイプ2を模した「パロディー」。デザインはタイプ2のアーリーモデル(1967年式までの形(顔))を模すことが多く、変わり種としてレイトバス顔なども存在します。ワーゲンバス仕様にされるベース車の多くは軽自動車で、いわゆる「軽バン」をベースにした物。その派生として普通車のワンボックスカー(ハイエース・キャラバン等)をベースにしたワーゲンバス仕様などもあります。
ベースとなる車両の多くは中古車(一部新車ベースで製作しているお店もあり)で、作り方は大きく分け二通り。市販の車種専用ワーゲンバス仕様外装キット(顔やバンパー等)を取り付て作る方法と、キットは使用せずに板金(FRP等)でオリジナルで製作している場合とがあります。
ボディーカラーはワーゲンバス仕様の特徴の1つで、本家ワーゲンバスや西海岸をイメージした、ビビットなカラーとホワイトの2トーンカラーに塗装されていることがポイント。
ワーゲンバスの代用車としてスタート
ワーゲンバス仕様が登場した10数年前は、本家フォルクスワーゲン・タイプ2(ワーゲンバス)が日本でブームになっていた時期とも重なり、「ワーゲンバスに憧れてはいるが高くて買えない」「手が出ない」と言った人たちの「代用車」としてのポジションからのスタートでした。
ワーゲンバス仕様として単独での地位を確立
ただそれも、世間での”ワーゲンバス仕様”の認知度が上がると共に、単独での地位を確立します。本家ワーゲンバスとは無関係に「ワーゲンバス仕様が欲しい」といったファンも急増。ノーマルの軽自動車より「かわいい」「オシャレ」「目立つ」などの理由から、若年層を中心に人気を博し、日常の足を始め「移動販売のクレープ屋さんと言えばワーゲンバス仕様」と言われるほど、キッチンカーとして多く活躍。現在ではワーゲンバス仕様の軽自動車が、街中で見掛ける「かわいい車」の代名詞となっています!
ワーゲンバス仕様の呼び方
独自の進化を遂げたワーゲンバス仕様。このかわいい車は特定の名称は無く、呼び方も人それぞれ。「キャルルックカー」「ロコバス」「ミニワーゲンバス」とも呼ばれますが、どれも一般的に浸透してるとは言えず、「ワーゲンバス仕様」が1番メジャーな名称。
- [キャルルックカー]キャルルックとは英語Cal Look。California Look(カリフォルニアルック)の略で「Look」とはスタイルの意味。「カリフォルニアで走っていそうなワーゲンバス」と言った意味合い。ただ本来「Cal Look」はVWの特定カスタムスタイルを指す用語である為「カリフォルニアスタイルのワーゲン」「カリフォルニアスタイルの車」といった意味で使うことは不適切。
- [ロコバス]ロコとはハワイ生まれ・ハワイ育ちの人を指す言葉。「ハワイで走っていそうなワーゲンバス」といった意味合い。「ワーゲンバス=ビーチ」イメージですが、実際よく見掛けるビーチのワーゲンバス画像の多くがカリフォルニア西海岸。
- [ミニワーゲンバス]名前の通り「小さなワーゲンバス」と言った意味合い。本家ワーゲンバスは5ナンバーサイズ(法規上3ナンバー)の普通車である為、軽自動車をベースにしたワーゲンバス仕様はミニサイズ。
ワーゲンバス仕様の歴史
日本でワーゲンバス仕様の軽自動車がブームになって早10年以上。他車でワーゲンバスの真似をする文化が、日本だけでのことだと思っている方も多いのではないでしょうか?
世界的に見ると「ワーゲンバス仕様」と呼べる車の歴史は古く、ワーゲンバスが発売された1950年代初頭にはすでに存在していました。
当時、発売されて間もなかったワーゲンバスはすぐに多くの人々から好評を得、人気の車になりました。その人気を少しでもあやかろうと作られたのが「ワーゲンバス似」の車達です。
最古のワーゲンバス仕様
その中でも最古のワーゲンバス仕様がこちら。隣国東ドイツ製、DDR BUS 「Nachbau」。(フォルクスワーゲンは西ドイツ)
その外観の類似ぶりは、本物をよく見たことない方なら「ワーゲンバス?」と思ってしまいそうな出来栄え?明らかにワーゲンバスを意識した(パクった?)デザインで、もちろん本家フォルクスワーゲン社とはまったく関係の無い車。
実際のところ、コンポーネントは戦時中ビートルの中古部品を流用。ワーゲンの部品を流用しているので「まったくの他人」と言うことにはなりませんが、公式には無縁。ボディーはフォルクスワーゲン・タイプ2を見よう見まねで作ったであろう、フルスクラッチボディー。一応、東ドイツの小規模自動車メーカー製ということになっていますが、とても「市販車」とは呼べない粗末な作りで、作られた台数もごくわずか。「メーカー量産車」と言うよりは、個人レベルに近い「寄せ集めの手作り自動車」と言った感じの車。
この車両以外にも、顔だけ模した車両やワーゲンバスの特徴であるV字デザインのペイントだけ施した車両など、多くの「ワーゲンバス仕様」が作られました。
本家「ワーゲンバス」とは?
「ワーゲンバス」とは、フォルクスワーゲンが1950年から1979年まで製造していた「タイプ2」の総称。
世界初のワンボックスカー
ワーゲンバスが発売された当初は、まだまだボンネット型が主流の時代で、基本乗用車はセダンとステーションワゴンが。そんな時代に、ワンボックスボディーの乗用車となれば、それだけでも異色の存在。トラックを乗用化したバスやパネルバン(貨物車)などはありましたが、最初から乗用車としてのワンボックスカーは、ワーゲンバスが世界初。
今はどのメーカーにもある「ミニバン」ですが、「ミニバン文化」発祥の地アメリカで、そのブームに火を付けたのが、何を隠そう当時アメリカにも多く輸入されていた、ワーゲンバス!当時「ワーゲンバス人気に続け」と各メーカーがワンボックスカーを出したのは有名な話。
ワーゲンバスの種類は大きく2つ
ワーゲンバスには二世代あり、1950〜1967年がT1/アーリーバス(←コレがワーゲンバス仕様のモデル)。1968〜1979年がT2/レイトバス。ドイツ生産が終わった後も、途上国を中心に各国で作り続けられていた為、ドイツ製では無い新しい年式のタイプ2もあります。そのすべてを含め「ワーゲンバス」。
※「ワーゲンバス」とはあくまで空冷エンジン搭載車限定の呼び名で、水冷化されたカラベル・バナゴン以降(T3以降)のモデルは「ワーゲンバス」とは呼びません。
グローバルに羽ばたく日本発祥のワーゲンバス仕様
軽自動車をベースにしたワーゲンバス仕様は、もちろん日本発祥。ですがそのファンは日本国内だけでなく、遠く離れた海外にも居ることをご存知でしょうか?
当然のことながら、海外にはワーゲンバス仕様の軽自動車を作っているお店も、軽自動車もありません(一部地域除く)。自国でワーゲンバス仕様の軽自動車に乗る方法は、たった1つ。「日本からの輸入」のみ。…言うのは簡単ですが実際輸入するとなれば簡単なことではないので、相当なファンであることは間違いありません。
我々日本人からすれば「なぜそこまでして…」とも思ってしまいますが、そのすべての方々に共通することは「ワーゲンバス仕様のファンである前に、ワーゲンバスのファン」であること。熱狂的なワーゲンバスファンの前では別け隔てなく、「ワーゲンバス仕様」もワーゲンバスの仲間。
ワーゲンバス仕様まとめ
残念ながら日本では、ワーゲンバスとワーゲンバス仕様を「本物偽物」と区別する方も一部に居ます。ですが、ワーゲンバス仕様はあくまで「パロディー」。2車はまったく別々の車に思えますが、そのどちらのファンにも言えることは、同じ「ワーゲンバスファン」であること!気軽に雰囲気を味わえると言う意味では、ワーゲンバス仕様は楽しい車かと思います。