空冷ビートルの年式をリアウィンドウで見る方は多いのではないでしょうか?
スプリットウィンドウ、オーバルウィンドウは古いビートルを語る上で欠かせない存在ですが、それ以外の種類に関してはよく知らない方も多いはず。
この記事では、年代別リアウィンドウの紹介とその変貌を解説。空冷ビートルのリアウィンドウには、なぜそんなに多くの種類があるのか?その秘密にも迫ります!
スプリットウィンドウ1938〜1953年
小ぶりな左右に分かれたガラスが特徴的なリアウィンドウ。名称は「分割」を意味する英語「Split」が由来。
空冷ビートルの祖先に当たる1938年に作られたプロトタイプで初めて登場したスプリットウィンドウ。初の量産型である戦時中ビートルKDF「Type60」にも採用。戦後「フォルクスワーゲン」に社名変更後もスプリットウィンドウはビートルに使用され、オーバルウィンドウに変更される1953年まで使用されました。
当時は技術面・コスト面から湾曲ガラスではなく平面ガラスを採用。左右のガラスを共通とすることで生産コストも抑えたウィンドウです。
オーバルウィンドウ1953年〜1957年
基本的に年式毎で仕様変更されることの多い空冷ビートルでは珍しく、1953年式の半ばにスプリットウィンドウから変更されたのが、オーバルウィンドウ。
スプリットウィンドウにあった中央の柱が無くなり一枚ガラスに。「オーバルウィンドウ」の名称は、その形から楕円・卵型を意味する英語「Oval」が由良。
スプリットウィンドウオーナーからの、クレームや不満の多かった、リアウィンドウ中央の柱があることによる「後方視界の悪さ」。その不満を改善する形で採用されたのが、中央柱を廃止したオーバルウィンドウです。
ガラスは平面ではなく、ボディーの丸みに合わせた湾曲ガラスを採用。スプリットウィンドウに比べると、後方視界が格段に向上しました。
スクエアウィンドウS 1958年〜1964年
それまでの小ぶりなリアウィンドウから大型の四角いウィンドウに変更。名称は四角形・正方形を意味する英語「Square」が由来。
すでに当時オーバルウィンドウは時代遅れな存在で、他メーカー車は開放的な大型のウィンドウを備えた車ばかりでした。ビートルのスクエアウィンドウ化は時代に合わせた変更とも言えます。
スプリットウィンドウ・オーバルウィンドウはそのまま車体の通称にもなっていますが、それに対して1958年〜1964年式の通称は、スクエアウィンドウではなく「スモールウィンドウ」と呼ばれています。
スクエアウィンドウはあくまでリアウィンドウのみの名称で、「スモールウィンドウ」とは、後年拡大されることになる全てのウィンドウに比べ、この年代のウィンドウが小さいことが由来する名称。(サイドウィンドウサイズはスプリットから1964年式まで同一)
リアウィンドウの拡大に合わせ変更されたのが、ウィンドウ下にあるエンジン冷却空気の取り入れ口であるルーバー。スプリット・オーバルでは同一のウィンドウ形状に合わせた縦長のルーバーでしたが、ウィンドウのスクエア化に伴い、横長のルーバーへと変更されました。このルーバーは後年のビートルでも同形状のまま使用されます。
スクエアウィンドウM 1965年〜1971年式
空冷ビートルのスクエアウィンドウの中では中間サイズに当たるリアウィンドウ。1964年までのウィンドウよりタテ3cm・ヨコ6cm拡大。固有の通称はありません。
1965年式よりすべてのウィンドウを拡大。リアウィンドウを除いたウィンドウは後年メキシコビートルまで同サイズになります。
1964年までのスモールウィンドウとの簡単な見分け方は、リアウィンドウ左右にあるルーフプレスラインまでの幅。プレスラインギリギリまで広いウィンドウならば1965年以降。隙間があるのはスモールウィンドウとなります。
スクエアウィンドウL 1972年〜2003年式
スクエアウィンドウの最大サイズ。1965年〜1971年式のミドルサイズのリアウィンドウからさらに拡大。ヨコ幅に変更は無く、タテを上方に4cm拡大。
1972年に拡大されたこのリアウィンドウは後年メキシコビートルまで同サイズ。スモールウィンドウと比較して明らかに拡大されているこのリアウィンドウは、高年式ビートルの特徴の1つ。リアウィンドウの拡大は後方視界の向上と共に、ウィンドウが小さかったことでの、車内の薄暗さも改善。
リアウィンドウの拡大で「Vintage感が損なわれた」との意見もありますが、ミドルサイズのリアウィンドウとは僅かな差。よほど見慣れている方でなければ分からない違いです。
カスタム&アクセサリー
リアウィンドウのカスタムで定番なのが、リアウィンドウブラインド。当時もあったアクセサリーの1つで、現在でも入手出来、手軽にVintage感が味わえるアイテム。
低年式ビートルでは標準装備(STD以外)だったアルミ製ウィンドウモールも、高年式ビートルでは樹脂モールもしくはモール無しに。光ったアルミモールへの変更はウィンドウ周りのワンポイントにもなり、Vintage感も出るアイテム。
高年式ビートルではベースモデルにより熱線入りのリアウィンドウを装備。古くなった熱線は機能していないことも多く、熱線があることでVintage感も失われているとの見方もあります。熱線無しガラスへの変更でVintage感を追求することも出来ます。
リアウィンドウまとめ
小さなスプリットウィンドウから拡大の一途を歩んだ空冷ビートルのリアウィンドウ。
実は…初期のプロトタイプにリアウィンドウはありませんでした。正確には後方確認用の小窓はあったものの、ボディー後部に「リアウィンドウ」と呼べる物は無く、リアに設けられたルーバーの隙間から後方を確認出来る程度。試作車だからと言う訳ではなく、当時のリアウィンドウの重要性が「後方視界」と言うよりは「後方確認」出来ればいい程度だったようです。
無かった所から始まったビートルのリアウィンドウが、年を追うごとに拡大して行ったのもどこか納得。ビートルらしい歴史の1つです。