基礎知識

Volkswagen Type-1(タイプ1) ビートル

生産が始まった1938年から2003年の生産終了までの、65年間に渡って作られていた小型大衆車。

1938年 VW38 「KDF-Wagen」

モデルチェンジが頻繁に行われる自動車市場では珍しく、タイプ1は長い生産期間にも関わらず大きなモデルチェンジはせず、細部の改良のみに専念。タイプ1らしいボディーデザインや基本構造は生産終了まで変わることはありませんでした。

2003年 メキシコビートル 最終モデル「ウルティマエディション」

タイプ1誕生

1933年ドイツ首相に就任したアドルフ・ヒトラーが国民車構想を打ち出したことに始まる。

国民車構想とは、当時まだ高価だった自動車を「国民全員が所有出来るようにする」と言った政策。

ヒトラーはアウトウニオンPヴァーゲンなどのレーシングカー開発なども手掛けていた自動車技術者の「フェルディナント・ポルシェ」に国民車の製作を依頼。

左フェルディナント・ポルシェ 中央アドルフ・ヒトラー

ヒトラーが提示した国民車の条件は

・信頼性の高い車体

・アウトバーン100km/h巡航

・大人4人乗車・燃料7Lで100km走行

・流線型ボディー

・空冷エンジン

・価格1000マルク以下

当時の基準からしてもハードルの高い条件でしたが、多くのテストとプロトタイプを経て量産に漕ぎ着けた国民車はヒトラーによって

KDF-Wagen」と命名

終戦後、名称は変更され「フォルクスワーゲン・タイプ1」となりました。

タイプ1の愛称

日本でのタイプ1の通称は“Beetle“ビートルですが、他国では“Fusca“フスカ、“Kafar“ケーファー、“Bug”バグなど呼ばれ方は様々。タイプ1の容姿から昆虫に例えた愛称が多く、日本でも昔は“カブトムシ“の愛称で親しまれました。

タイプ1の生産台数

ドイツでの生産開始からメキシコでの生産終了までに製造されたタイプ1の累計生産台数は

2152万9464台

累計生産数では現在世界ベスト4。(ニュービートル・ザ・ビートル除く)

車体構造

タイプ1最大の特徴は「フロアー一体型バックボーンフレーム

ボディーが分離出来るフレーム構造でありながらフレーム側にフロアーを一体化させた独創的なシャーシを採用。ボディーも車体強度の一部を担う”半モノコック構造”とすることで、部品点数の削減や軽量化も図れ、同時にシャーシの完全なプラットフォーム化も実現。

ビートルらしさの丸いシルエットも車体強度を保つ為に一役かっています。

ドライブトレーンはRR(リアエンジン・リアドライブ)。

FR(フロントエンジン・リアドライブ)に比べ、登坂性能の高さや前輪荷重軽減に伴うハンドリング性能の向上。最後部にエンジンを配置することで、デッドスペースを極力減らしたコンパクトな車体で広い室内設計を可能にしました。

空冷エンジン

エンジンは”空冷ワーゲン”が由縁の最大の特徴。直立直列エンジンが主流の自動車界では珍しい、空冷水平対向4気筒エンジンを採用。(強制空冷・OHV)

水平対向エンジンの特徴である高トルクを発生させられる性質と低重心でコンパクトなエンジン形状。空冷エンジンの特徴である粘り強さや高い耐久性。簡素である構造も生産性の向上やコスト安、メンテナンス性の向上などに貢献。

このエンジン無くして、空冷ワーゲンの多大な成功は無かったと言えます。