空冷ワーゲンの世界ではメジャーな存在の「ポルシェアロイ」。ポルシェ純正ホイールであるポルシェアロイをなぜ空冷ワーゲンでは好んで付けるのか?
その秘密に迫ります。
そもそも「ポルシェアロイ」って何?
“ポルシェアロイ“の名称は世間一般で使われる通称で、正確には「ポルシェアロイホイール」(Porsche Alloy Wheel)。
“アロイ“とは合金のことで、直訳は「ポルシェ製合金ホイール」の意味。
(ここで言う合金は軽合金「アルミニウム」です。)
ただそれだと、「ポルシェのアルミホイール」すべてがポルシェアロイとなってしまいますが、一般的に言われる「ポルシェアロイ」とは67年Porsche911から89年式911ターボs(930ターボ)に採用されたクローバーリーフ(クローバー形状)のホイールを指します。
ポルシェアロイが初めて世に出たのは1965年ドイツフランクフルトで開催された国際モーターショー(IAA AUTO SHOW)。そこに展示されたPorsche911に装着されたのが初めてで、実際量産車にポルシェアロイが装備されたのは1967年発売のPorsche911sからです。
ポルシェアロイ=フックス?
近年使われようになったポルシェアロイの呼び名、「フックス」(フックスホイール)ですが、「フックス」とはポルシェ社がポルシェアロイの製造委託をしていた会社。「OTTO FUCHS 」オットーフックスのこと。
1960年代当時、まだ鉄ホイール・ワイヤースポークホイールが主流の中で、いち早く量産車へのアルミホイール(軽量鍛造ホイール)を採用したのがポルシェで、それを実現させたのがポルシェアロイの製造元である「オットーフックス社」です。
ポルシェ純正ホイールであるフックス製ホイールと、アフターマーケット品(社外レプリカ)ポルシェアロイとの区別を意とした通称で、純正ポルシェアロイのことを「フックス」と呼ばれています。
※ちなみに同ドイツ国内にオイルメーカー「フックス」がありますが、オットーフックス社とは無関係です。
なぜ空冷ワーゲンにポルシェアロイ?
実際空冷ワーゲンにポルシェアロイを付け出したのは1970年代カリフォルニア。
キャルルックの1アイテムとして脚光を浴びたのが始まり。
空冷ワーゲンでポルシェアロイが流行った要因には
・ポルシェアロイのカッコ良さ
・高級スポーツカーのホイール
・軽量鍛造ホイール
と言った要因ももちろんありますが、その根底にあるのはフォルクスワーゲンと同じ起源を持つ高性能スポーツカー“ポルシェ“への親しみを込めた「敬愛」。
ポルシェパーツのマッチング
空冷ワーゲンにポルシェアロイを取り付ける理由の1つに、そのマッチングの良さがあります。
空冷ワーゲンではPorsche911ポルシェアロイ以前からポルシェパーツの流用は盛んに行われてきた歴史がありますが、その理由は
多くの共通性、マッチングの良さ。
ポルシェ初の量産車Porsche356では、そのデザインや構造起源にビートルがあり、単に流用している部品やポルシェ専用でありながら空冷ワーゲンと共通性のある設計であったりと多くの関連性がありました。
その後継車である911にも同じ流れがあると言えます。
例)Porsche356Aでは、ホイール・大径ドラムブレーキ・アルミフィンドラム、エンジンなどは、同年代ビートルにボルトオン。Porsche356B.Cのディスクブレーキですらも、空冷ビートルに小加工で取り付け可能です。
911ポルシェアロイでは、空冷ワーゲンには無いピッチサークルPCD130/5穴なのでそのままでは取り付け出来ませんが、68年以降の空冷ビートルではPCD130/4穴であることから、ポルシェピッチサークルへの加工も比較的容易で、盛んに行われてきました。
後に無加工で取り付け出来る、変換アダプターやポルシェピッチの専用ドラム、ディスクローターも発売され、現在では車種年式を選ばず手軽にポルシェアロイを取り付られるようになりました。
ポルシェアロイの今
近年、空冷ポルシェの高騰もあり、その純正ホイールである「フックス・ポルシェアロイ」も希少視されいて、状態のいい物は高額取引されている現状があります。しかし現在では、安価でもハイクオリティなリプロダクト品が多くあるので、空冷ワーゲンでも手軽にポルシェアロイを楽しむことが出来ます。
多くの社外ホイールでは流行り廃れがある物ですが、ポルシェアロイに限ってはそれもなく、いつの時代も多くのファンが居るホイールの1つです!