空冷ビートルのフロントウィンドウに、多くの種類があることをご存知でしょうか?
ビートルのウィンドウは低年式高年式を語る上で欠かせないポイントですが「他年式と何が違うのか?」「小さい・大きいとは具体的にどれ位違う?」かは、あまり語られることのないところ。
この記事では、年代別フロントウィンドウの紹介とその変貌を解説。空冷ビートルのウィンドウには、なぜそんなに種類があるのか?その秘密にも迫ります!
第1世代 1938年〜1957年(セダン)
ビートル全年式内でもっとも小さいフロントウィンドウ。KDFビートル(戦時中モデル)からスプリットウィンドウ/オーバルウィンドウまで共通サイズ。
KDFビートル(戦時中モデル)から1957年(オーバルウィンドウ)まで使用されたサイズのフロントウィンドウ。ガラスは平面ガラスを使用し、小ぶりで全体的に丸みのある形が特徴。フロントウィンドウの高さがサイドウィンドウとはほぼ同じである為、サイドから見たルーフの丸みがより強調され、ビートルらしい丸みを帯びたボディーシルエットが冴えるフロントウィンドウです。
ガラスの大きさは、中央部分でおおよそタテ29cmヨコ98.5cm。
ウィンドウサイズに合わせた極端に短いワイパーブレードと、ワイパーアームの止まり方が特徴的なフロントウィンドウ。
第2世代 1958年〜1964年(セダン)
ビートル誕生後、初めて拡大されたフロントウィンドウ。上左右に拡大され、前モデルより四隅が角張った、スクエア形状に変更。
横幅は数ミリですが広がり、縦は上方へ4cm拡大。寸法的には僅かな変更であるが、四隅を角張らせた形状にしたことにより、ガラス面積は増え、視界は格段に広くなりました。オーバルまでの特徴だったワイパーの止まり方も、視界の邪魔であった為、水平位置に収まるよう改善。ガラスは前モデルに引き続き平面ガラスを採用。特徴の1つであったフロントウィンドウ上部のルーフ先端の丸みも、この世代のウィンドウを最後に姿を消します。
ガラスの大きさは、中央部分でおおよそタテ33cmヨコ100cm。
前モデルより拡大されたとはいえ、まだまだ小さいウィンドウサイズは、見る人にクラシカルな印象を与え、人気の高いモデルとなっています。
第3世代 1965年〜2003年(セダン)
2回目の拡大となるこのフロントウィンドウは長い間使用されたこともあり、もっともメジャーで、65年からメキシコビートル使用されたウィンドウ。
スモールウィンドウと呼ばれる64年までのモデルから一変、65年にはすべてのウィンドウを拡大。フロントウィンドウも拡大され、それまでの平面ガラスから僅かに湾曲したラウンドガラスを採用。58年の変更では上部にのみ拡大されたフロントウィンドウでしたが、65年の変更では上下に拡大。ガラスの湾曲に伴い、ウィンドウ下のフロントカウル(ワイパー取り付け部周辺)の形状を変更。(ウィンドウからの雨水の流れを意識したV字デザイン)。特徴的だった64年までのウィンドウ上部ルーフのスラント(丸み)は完全に姿を消し、フラットな形状に変更。
ガラスの大きさは、中央部分でおおよそタテ36cmヨコ102cm。
このウィンドウはストラットモデルの「1303」を除き、ドイツ生産終了まで採用。後年ではブラジル/メキシコでも使用され(年式によって)、最終型2003年式メキビーまで使われたウィンドウです。
第4世代 1973年〜1975年(1303/セダン)
ストラットモデル1303″マルサン”専用の大型ラウンドスクリーンを採用。ビートル内ではコレが最大サイズのフロントウィンドです。
1971年に登場したストラットビートル1302ではトーションバーモデルと同一のウィンドウでしたが、73年に登場した1303では、このモデル専用になる大型ラウンドスクリーンを採用。1303もボディー外寸は以前のモデルと同じである為、単純な上下左右への拡大は出来ず、ウィンドウ下部を前方へ移動させることでガラスを傾斜させ、ガラス面積拡大。ウィンドウを大きく湾曲させることで視界が広がり、死角を減らす狙い。
1303では大型ラウンドスクリーンに伴い、ダッシュボードも変更。以前のモデルまではボディー一体で取り外し不可のダッシュボードでしたが、1303ではウレタンフォームを使用した、マルサン専用デザインの現代的な脱着式ダッシュボードを採用。
ガラスの大きさは、中央部分でおおよそタテ49cmヨコ107cm。
平面的なフロントウィンドウを使用してきたビートルでは、大きな仕様変更でしたが、1303(セダン)が75年に生産終了になると、同時にこのウィンドウも姿を消します。
コンバーチブル
コンバーチブル専用のフロントウィンドウもセダン同様年代別に拡大。
- 1949〜1957年
- 1958〜1964年
- 1965〜1972年
- 1973〜1979年(1303/ストラット)
コンバーチブルのフロントウィンドウも基本的にはセダンと同タイミングでの変更。ただし、73年以降のタイプ1コンバーチブルは1303モデルを79年(ビートルドイツ生産終了)まで継続して生産した為、73年以降のコンバーチブルはラウンドスクリーンのみとなります。
セダン同様、コンバーチブルでも低年式はウィンドウが小さくVintage感もあり、マニアを中心に人気の高いモデル。逆に高年式コンバーチブルは大きなウィンドウがポップな印象もある為、若い世代や女性に好まれる傾向があります。
フロントウィンドウまとめ
年を追うごとに拡大されたビートルのフロントウィンドウは、その年代を象徴する特徴の1つであると共に、ビートルの歴史を語る上で大きなポイント。
「何も変わらなかった」と思われがちなビートルも、実は毎年多くの「改良」を重ねられ、フロントウィンドウの拡大もその中の1つです。その変更も、たんなる「デザイン」の変更ではなく、より良くする為の「改良」。その証拠に、小さなウィンドウだった50年代と70年代のビートルとを乗り比べると、70年代ビートルのフロントウィンドウに何の不満も無いことに気付きます。
どの年代であっても、年式毎に多くのヒストリーや発見があり、それがビートルの面白さや魅力にもなっています!