「素人が作ったエンジンは見れば分かる」
そう語るのは、空冷ワーゲン歴46年のベテラン「Rさん」。
Rさんによれば、素人が作ったエンジンは「サービスマニュアル通り」に組み立ててあるので一目瞭然だと言う。それが故に「間違いだらけ」なのだそうだ。マニュアル通りに作っているにも関わらず「間違いだらけ」とはまったく意味が分からない。
過去には、サービスマニュアルを否定するかのような発言に「反論」されることもあったそう。例えば「ディーラーメカニック」や「T校自動車専門学校の教員」。両職とも「マニュアル厳守」が基本であり「自動車整備のプロを自負」しているであろう職業の方である。
その都度Rさんは、「彼ら」に理由を説明し、その話を聞いたすべての人が「言葉を失った」そうである。
Rさんによれば、彼らは「現行車の整備や修理」に関してはプロかもしれないが、「すべての自動車のプロではない」。特に空冷ワーゲンに関して言えば、「まったくの素人」であるらしい。
そもそも、市販「サービスマニュアル」や「整備書」は、ディーラー用を元に再編集されている物がほとんど。それ故に、ディーラーで扱うであろう車、「年式は20年落ち程度まで」「距離は自家用車なら20万キロ程度まで」の車を対象にしている場合が多い。それ以上に古い年式や過走行車は、当然「マニュアル想定外」の車である。特に、日本にある空冷ワーゲンの多くは、アメリカから持ち込まれた並行輸入車である為、日本車では考えられない程に酷使された車や、ずさんな修理を重ねられた車があり、到底「マニュアル通り」にメンテナンスなど出来ない車も多く存在する。
「マニュアル」の内容で大きく異なるのがもう1点。「使用する部品の違い」である。マニュアルは「純正部品」の使用を前提にした内容であるが、メーカーから部品が入手出来るのも、新車から20年程度まで。それ以上に古い車では、純正部品の入手が困難になり「社外部品」に頼らざるをえなくなる。社外品で1度でも「痛い思い」をしたことがある方なら分かって頂けるだろうが、社外品は「新品部品」と安易に信用出来るものばかりではない。例えば「ガスケット」のような脇役的な部品でさえも、「使える品質か?」「使うのを止め別の方法を考える」など、その都度判断が必要になる。マニュアルに「ガスケットを入れろ」と書いてあるからと言って、安易に使ってしまえば、それがトラブルの原因にもなり、その行為こそが「素人」の証にもなってしまいます。
「サービスマニュアル」は、あくまで「基本」であり、作業する上での「参考書」。
空冷ワーゲンなど、あまりに古い車では、マニュアル作成当時の「想定」と異なる「現状」も多く存在します。そこをどう対処しトラブルを回避出来るかが「経験や知識」であり、一般の方と「空冷ワーゲンのベテラン」との違いであろう。※一般の方が安易に「サービスマニュアルを無視」することは絶対にオススメしません。基本は忠実に。