基礎知識

匠に聞いた!空冷ワーゲンに最適なオイル3選

「空冷ワーゲンのオイルは何を使えばいいの?」

空冷ワーゲンに乗り始めたばかりの方なら誰でも最初に持つ疑問だと思います。「ネットで調べたけど説明が難しくて今ひとつ分からない」「知りたいのはオイルの銘柄」といった方も多いはず?そんな疑問を空冷ワーゲンの匠に聞いてみました。

空冷ワーゲンオイル事情

VWstyle(以下ブイスタ):空冷ワーゲンのオイルは何を使えばいいのですか?国産車ならメーカー指定や推奨オイルが指定されていますが空冷ワーゲンは?

:空冷ワーゲンの推奨オイルはシングルグレードSAE30とSAE40。数字は粘度で30番より硬いのが40番。季節によって使い分る必要があって、夏は40番でそれ以外は30番といった感じ。

現在「空冷ワーゲン用オイル」「空冷エンジン用自動車オイル」とされる物は無く、事実上水冷エンジン用として販売されている汎用オイルの中で空冷ワーゲンに使えるオイルを選ぶ形。

空冷ワーゲンにマルチグレード

ブイスタ:今現在マルチグレードが主流ですが、空冷ワーゲンに使えるマルチグレードはありますか?

:空冷ワーゲンに使えるマルチグレードは「20w-50」付近。そもそもシングルグレードとマルチグレードの違いは性質の違い。シングルグレードは全温度域で粘度の変化が少ないオイル。マルチグレードは温度域に合わせて適正な粘度を保つ性質を持ったオイル。実際は表記の違いだけの部分もあり、シングルグレード30.40番と似た性質を持ったマルチグレードオイルであれば使用に問題はありません。

:マルチグレードなら、理論上1年中同じオイルを使用可能なことになりますが、実際はカバーしている温度域が広いことや、水冷エンジンターゲットのオイルを温度変化の大きい空冷エンジンで使用することから、冷間時・高温時の粘度はシングルグレードより低め(柔らかい)。

空冷ワーゲンに使えるマルチグレードは20w-50以外に「15w-40」「15w-50」「20w-40」なども使用可。ただ、使う車や気温によってはオイルが原因の不調になる場合もあるので、そう言った場合は交換が必要です。(夏:熱ダレ・燃費悪化等、冬:始動性悪化・暖気不良、燃費悪化等)

空冷ワーゲンに使えないオイル

ブイスタ:空冷ワーゲンに使ってはいけないオイル。もしくは適さないオイルなどはありますか?

:絶対にダメなのは粘度の低いオイル。0w-◯◯、5w-◯◯、10w-◯◯などは粘度が低すぎるから絶対に使用不可。ただし緊急時に足す程度なら問題ありません。

:空冷ワーゲンでの粘度の低いオイルの使用は、オーバーヒートや油膜切れの原因にもなり最悪エンジン破損にも繋がります。目先では何も起きずとも、長い目で見ると使って良いことはありません。低粘度オイルを使ってすぐに出る症状には、オイル漏れ悪化やオイル上がりによるマフラーからの白煙。

低粘度オイル

低粘度オイルの他に適さない物には、高性能車用オイル・環境配慮型オイル(EU諸国生産等)・2輪車用オイル・ディーゼルエンジン用オイル・安価過ぎるオイル(コス◯コオイル等)などがあります。空冷ワーゲンに使える粘度であっても、そのオイルの用途によって入っている成分や特性が大きく異なる場合があり、空冷ワーゲンに使えばトラブルの原因になる可能性があります

空冷ワーゲンには鉱物油?化学合成油?

ブイスタ:一般的に「クラシックカーには鉱物油」「古い車に化学合成油は良くない」と聞きますが本当?

:空冷ワーゲンは鉱物油推奨ではありますが、化学合成油の中にも「空冷向き」な物があり、そういったオイルであれば使用可能です。

:「化学合成油が向かない」とされている理由いくつかありますが、1つは「化学合成油は高精製である為、古いタイプのオイルシールをすり抜けやすく、オイル漏れの原因になる」といったもの。もう1つは「水冷エンジンより高温になる空冷エンジンでは、安定した性能を発揮するはずの化学合成油でも対処出来ず、逆に悪影響を及ぼす可能性がある」と言ったもの。どちらも絶対に起こる症状ではないので、使うのであれば少し「様子を見る」ことが必要かもしれません。

空冷ワーゲンに最適なオイル3選!

Valvolin VR-1 20W-50 鉱物油

現在、空冷ワーゲンでもっとも使われているスタンダードなオイル「バルボリン VR1」。過酷な状況下で使われるレースカーや耐摩擦が求められるビンテージカーに最適なオイルです。Valvolineは昔からワーゲンに使われてきたオイルの1つ。空冷エンジンに必要不可欠な、ZDDP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)を高濃度で配合した、他に類を見ないオイルです。

※メキシコビートルにも使用出来ます。

Kendall GT-1 SAE30,40 鉱物油

ベースオイルでは定評のあるアメリカ/ペンシルベニア産の原油を使用した100%アメリカ製鉱物油オイルのケンドール。バルボリンと並び古くから空冷ワーゲンや空冷ポルシェで「指定オイル」として使用され来た歴史があります。性能面でValvolineよりやや劣りますが、通常使用では問題なく使えるオイルです。安価な為よくオイル交換する方にオススメ。

※メキシコビートルにも使用出来ます。

Valvoline VR1 「HIGH ZINC」

一般に流通している「バルボリンVR1」とは成分比率が異なるハイジンク仕様。表向きは、先に紹介したVR1と同製品として扱われていますが、輸出国の違いから通常モデルよりさらにZDDPを増やしたスペシャル仕様。通常モデルよりやや高価な為、一般的にはあまり売られていませんが、オイルに拘る一部の空冷ワーゲン専門店さんで使われています。

※メキシコビートルなど触媒付き車にはあまりオススメしません。

この黄色い「HIGH ZINC」が目印

空冷ワーゲンオイルまとめ

今回、空冷ワーゲンに最適なオイルとして3点紹介しましたが、実際は地域(平均気温)季節(気温)エンジン状態(過走行等)によって適したオイルも違います。

ご自身でオイル交換を行う場合には、自分の車(エンジン)に合ったオイルを探すこと。ライフスタイルに合ったオイル交換サイクルを見つけることが重要です。

※オイル交換をショップ(空冷ワーゲン専門店)で行ってもらう場合は必ずショップに指示に従うこと。ショップ側は色々な状況を踏まえた上で、使用するエンジンオイルを厳選、選定しています。

テクニカルデータ

  • エンジンオイル量 2.5L(1.5クオートオイルサンプ付き4L)
  • 交換サイクル 3000km〜5000km毎又は3ヶ月〜半年毎