空冷ビートル

映画『 ネメシス 黄金螺旋の謎』に登場する謎の車の正体は?

大ヒット上映中!広瀬すず・櫻井翔がW主演を務める『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』。そこに登場する栗田(江口洋介)の愛車である「謎の車」ビートル。

ファンの間では

「江口洋介の誕生日1967年と同じ、67年式のロクナナでは?」、「高年式ぽいからメキビーの6Vルック?」などと言った意見も!?

一見して「空冷ビートル」であることは、たいていの方が分かるかと思います。ただ、年式特定となると「少しワーゲンは詳しい」程度では、その判断が難しいほど、実は正体不明の「大改造車」!?

この記事では、『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』劇中車ビートルを専門家監修の元、詳しく解説。紹介しています。

最初に

空冷ビートルでは、高年式をベースにした低年式仕様の『6V Look(ロクボルト ルック)』や、ダブルバンパーラストイヤーの67年式を模した、通称『ロクナナルック』などが、カスタムの定番。

劇中ビートルもそんな1台。

車体

車体は、右ハンドルのトーションバーモデル。右ハンドルの並行輸入車は極端に少ないので、右ハンドル=ディーラー車と考えるのが妥当です。(特に高年式では)

フロントウィンドウやサイドの窓が大きくヘッドライトも縦目。ホイールが4穴なので、一見して68年以降の高年式と分かります。ドアハンドルの形状や給油口が側面にあることも、67年までには無いディテールで、高年式ビートルの特徴の一つです。

  • 右ハンドル(ディーラー車)
  • ホイール 4穴(4ボルト)68〜Mexico
  • トーションバーモデル Mexicoまで
  • ドアハンドル形状 68年以降
  • 側面給油口 68年以降
  • ヘッドライト形状(縦目) 67年以降 

フロントビュー

一見すると、縦目ライトにホーングリルがあり、ダブルバンパーも付いているので、67年式にも見えますが、平均的な作りの『ロクナナルック』。1番のポイントはフロントフード(ボンネット)。67年であればフードの先端はもっと長く、ハンドルにロックボタンもありません。ウインカーはなぜか、ロクナナルックには不釣り合いな、63年までのスリムなタイプ。

6Vルックやロクナナルックで、高年式フードやフェンダーを低年式の物に替えることはあっても、相当な「へそ曲がり」笑でもない限り、逆のパターンはありません(低年式の高年式ルック等)。なので、フードやフェンダー(ライト)は、この車体年式に合ったオリジナルと推察できます。

  • 縦目ヘッドライト 67年以降
  • ホーングリル 67年まで(STD72まで)
  • ダブルバンパー 55〜67年(シングルバンパーはSTD73まで)
  • 高年式フード(短い) 68年以降
  • フェンダー上ウインカー 58〜74年 
  • 給油口 蓋ロック無し 73年以降
上68〜72、下73以降(画像75年式)

リアビュー

リアで注目すべきは、リアウィンドウのサイズ!

遠目に見れば6Vルックですが、よくよく見ると、なぜか不釣り合いな大型テール。このテールランプの正体は、68〜72年用の通称『アイロンテール』。通常、6Vルックであれば、6Vテール(67年まで用)を組み合わせるのが一般的なので、アイロンテールなのはかなり異色。実は車体がアイロン年式、もしくは元々『アイロンルック(68ルック)』であったのなら、うなずけますが、どちらにしても…あまりしない組み合わせ。

ビートルの場合、年代で大きさが変わるウィンドウサイズは、有力な年代判定材料!この車両のリアウィンドウは72年以降用。ビートルのリアウィンドウとしては、最大サイズです。72年からは、ストラット・トーションバーを問わず、メキビーまですべて共通のリアウィンドウです。

72以降(画像1303)
  • リアウィンドウ 72年〜Mexico
  • 6Vエンジンフード(デッキリッド)66年まで
  • アイロンテール 68〜72年(STD73)

インテリア

内装で注目すべきはヘッドライナー!

ビートルのヘッドライナー(天張り)は、大きく分けて2種類。ルーフからピラーまで生地が覆う『デラックス用ヘッドライナー』と、ヘッドライナーがルーフのみで、ピラー部分はボディーが見えたままの、簡素な『スタンダード用ヘッドライナー』。

劇中車は、窓周りにボディーが見えておらず、生地もピラーまで貼り込まれているので、『デラックスヘッドライナー』。スタンダード仕様からデラックス仕様への、ヘッドライナーの張替えは、構造上困難なので、デラックスモデル(車体)であることが分かります。

上デラックス、下スタンダード
  • デラックスヘッドライナー(デラックスモデル)
  • 高年式用ルームミラー 68〜78年
  • ヘッドレスト一体シートのヘッドレストカット 68年以降
  • ワイパーアーム 73年以降
  • 3点式シートベルト

まとめ

年式に関しては、『コレだ』と言う決定打が無いようにも思える劇中車ですが、実は多くのヒントが隠されています。

ヒント①

  • トーションバーモデル
  • 右ハンドル(ディーラー車)
  • リアウィンドウサイズ 72年以降
  • フューエルリッド・ロック無し 73年以降
  • フェンダー上ウインカー 74年まで

ヒント②

  • 72年と73年のデラックスモデルは、1302と1303のストラット車のみで、トーションバー車はスタンダードモデルのみ。
  • 74年まではフェンダー上にあったウインカーが、75年からバンパー内とサイドマーカーに変更。75年式以降は、法令上サイドマーカーが必ず必要で、フェンダー上部ウインカーだけは法令違反。(地域差解釈違いあり)

あともう一つヒントを付け加えるとすれば、『劇中車でありながら、ナンバープレートは本物』であること。完全な劇中車とは違い、普段乗られている車ということなので、当然、法令に順したディテールであると推察出来ます。

すべてを踏まえVWstyleでは『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』劇中車ビートルは【74年式トーションバーモデル】と推察!

※あくまで推測です。75年以降の可能性もゼロではなく、ナンバープレートが本物でない場合、撮影車が複数台ある場合も、この限りではありません。

1974年式ビートル