メキビー(メキシコビートル)によくある、「カンカン」「カチャカチャ」「カタカタ」といった、エンジンから聞こえる大きな金属音は、油圧式バルブリフター(ハイドロリックリフター)の不良!
残念ながらメキビーの油圧リフターは簡単に修理することは出来ません。しかし、場合によっては簡単な対処で鳴り止むことも?
この記事は、メキビーオーナー自身が対処する場合を想定した、初歩的な改善方法の一例です。改善しない場合は、早期の修理をおすすめします。
油圧式バルブリフター
油圧式バルブリフター(ハイドロリックリフター)は、OHVエンジンにおいて、油圧の力でバルブクリアランスを自動で一定に保つ機構を持った、バルブリフターの一種。
空冷ビートルではメキビーでのみ採用されているリフターです。メキビー以外のビートルでは「ソリッドリフター(固定式)」が使われている為、バルブクリアランスは定期的に調整が必要になります。
はじめに
リフターの異音は、1度その音が鳴り出すと、放っておいても鳴り止むことはなく、しかもその音がしている間は、エンジンも不調で「非力」。最悪の場合「マフラーの異常加熱」や「エンジン破損」に繋がることも。
真剣に直すのであれば、リフターを交換すほかなく、その為にはエンジンを分解する(クランクケースを割る)必要があります。しかし「ただ、リフターだけを交換する」と言った訳には行かず、リフター交換=エンジンのオーバーオールすることになり、費用もそれなりに掛かってきます。例)リフター部品代約2万円+オーバーオール代金約30万円〜50万円。
対処方法①オイル交換
リフターの動作不良の主な原因は、過走行やオイル交換不足による、リフター内の汚れ。その為、オイル交換するだけで改善が見られ場合もあります。
1度のオイル交換で異音が収まらない場合は、短いサイクルで連続してオイル交換することで、徐々に異音が小さくなっていくこともあります(例、毎日乗る車で週1間隔2〜3回程度)。その時に使用するオイルは、量販店で売っている「安いオイル」で大丈夫です。「フラッシング(掃除)」を目的としているので、10W40などの粘度の低めなオイルが最適。
※異音が収まった際は(収まらなかった場合も)、普段使用しているオイル(粘度)に戻すこともお忘れなく。
対処方法②暖気運転
メキビーのリフター異音でもっとも改善が期待出来る対処方が「アイドリングによる暖気運転」。「暖気って…」と思われるかもしれませんが、この方法でかなり大きな「カンカン音」でも改善した例が多数あります。
暖気運転によるリフター異音の改善方法は、「アイドリングのまま、15分から30分程度放置する」だけ。回転を上げたりしないで、ひたすらアイドリングで放置するのがポイントです。これで解消するのであれば、その後は異音は収まり通常通りの乗り方で大丈夫です。
そもそもリフター不良のメカニズムは、本来油圧でプッシュロッドを押し上げるはずのリフター内ピストンが、汚れなどが原因で途中で引っ掛かり、上がりきっていない状態です。そう聞くと「回転を上げて油圧を高めれば上がるのでは?」と思いがちですが、それは逆効果。もしそれで改善するのであれば、走行すれば直ってしまうことになります。「暖気」による改善方法は、油圧を高めずにリフターを温め膨張させることで、内部ピストンやバルブの固着を解消させるのが狙いです。
※この対処方で注意すべきは、周囲への配慮と、マフラーの異常加熱。エンジン不調中の長時間のアイドリングなので、マフラーに近いリアエプロンはかなり高温になり、最悪「焦げる」場合も…。定期的にチェックしながら行うと共に「危ない!」と感じた際は速やかにエンジンを止めて下さい。
※空冷ビートル全般、平常時のアイドリングでの暖気運転は基本不可となっています。アイドリング時は、油圧低下や潤滑不良が起きやすく、長期に渡ってのアイドリング暖気は、カム山・リフターの偏摩耗、破損が起こりやすくなります。
対処方法③乗る
リフター異音の「初期段階(異音が小さめ)」であれば、「頻繁に乗る」ことで解消されることも。
リフターの動作不良は、放置期間が長い場合にも起きる症状であり、頻繁に乗ってあげることで、徐々に異音が小さくなっていくこともあります。実際、メキシコ・ブラジルのディーラーや現地オーナー間でも「油圧リフター車は3日に1度はエンジンを掛けるべき」とされています。
尚、上記対処方法で異音が解消しない場合は、速やかに修理することをおすすめします。紹介した対処方法は「改善した事例の紹介」であり、完全な改善を確約したものでありません。作業する場合は自己責任でお願いします。当サイトは一切の責任を負えません。